愛しの最大豊隆部


亀

  わたくしは最大豊隆部をほとんど愛していると言っていい。諸君は学生のとき習わなかったであろうか、クラスプサベヤーにて確認した上で、可及的に最大豊隆部のやや下をなぞる形に鋳造鈎の概形を描けとか。

  たとえばボルドーを大ぶりのそれ用のグラスに注いだとしてみよう。ワインは正しくグラスの最大豊隆部あたりまでで止めねばならぬ、もっと注ぎ続けたくともそれでは正しい作法とならぬ。これはいはばソムリエにとってのあるいは愛飲家の初歩的常識だ。意地汚くもっと上まで注ごうものなら、その行為は諸君を立派なカッペと化す。



  そしてたとえばテーラーで君がオーダーメードのスーツを誂えたとしてみよう。そのときジャケットの裾はキッカリと君のお尻の最大豊隆部を過ぎたあたりに位置するをもって正式だという常識はわきまえていて欲しい。それよりかはるか上であったとしたならば、そんなツンツルテンのジャケットではあたかも昨今のイモボーヤと同じになってしまうではないか。


  突然話は百八十度変わる。言うも無粋だが、ああ女性の最大豊隆部の何とかぐわしきことか!この場合、そこが女体の真ん中へんの三段になったあたりになってしまうようでは世も末である。もっと下の方とか、できうれば上方にこそ、それがあって欲しいものだ。


  さて話は再び百八十度変わって先ほどまでのもとに(つらくとも)戻ろう。最近女性だけではなく男性にもハットが流行っている。これはチョンと頭に乗せただけでは本当はいけない。頭の最大豊隆部に達する直前あたりまでは深くかぶるべきなのだ。それでいて最大豊隆部をチョットでも通り過ぎるようではイケない。そんなかぶり方なんか、それもズーッと通り過ぎて目深過ぎるようにしようものなら、それこそむかしの汚穢屋のお釜帽と同じに見られてもやむをえまい。その深過ぎるようにかぶった帽子の上から周囲のつばを下に折る形に手ぬぐいでほっかむりでもすれば、これぞ完璧!


  で、最大豊隆部であった、問題なのは。では地球の最大豊隆部たる赤道とか子午線を認識さすがため、こういう数学的命題を掲げよう。今、突然ひらめいた!例えば赤道上にピッタリと地球一周ロープを回したとしてみよう。実際の詳しい地球の長さは今は措く。そのロープを人類全員で地上一メートルの高さに持ち上げると。つまり一メートル持ち上げたままロープを地球一周さすと。そうするとロープはあと何メートル余分に必要になるのかと。諸君は、これが何百キロ何千キロあるいは天文学的数字で必要になると当然考えるのではないか。ところが今わたくしメが計算したところによると、タッタの数メートルなのである。ではやってみようか・・・・面倒だから地球の直径はXメートルとする、そして地球一周だからその両脇では1+1で2メートルだ。これだけ直径は長くなると。そして余分に必要となるロープの長さはと・・・・


  3.14(X+2)-3.14X=6.28 ワオッ!たったの六メートル!要は、人間から見てのあまりに巨大な物体を前にしてでは一メートルも六メートルもゴミのごとくの目にも入らぬような数値なのである、という好例だ。この種の、数字が人の目にまるでマジックのごとくに映じてしまう事例をもうひとつあげてみよう。では、ヒップ一メートルのオバさんが全体の厚みで一センチ、グルーッと太ったとする。すると調整すべきスカートの布地はプラス六センチ!諸君の目にはこれは逆に巨大に映るだろう。このように研究においても何でも数字に惑わされてはいけない。その伝で次に愛しのバストの最大豊隆部の・・・・もうやめた。突然善良なる市民としての自覚が戻って来たから。。



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